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第42回(令和6年度)研究助成金贈呈式 2024年12月6日
12月6日(金)、公益財団法人カシオ科学振興財団は、カシオ計算機株式会社カシオホールにおいて、第42回(令和6年度)研究助成金贈呈式を行い、103大学257件の応募の中から、51件の研究に対し計8,700万円を助成しました。
贈呈式では冒頭に理事長 樫尾隆司よりコロナ禍が明けたことにより、応募数が257件と昨年の207件より大幅に増加し、良い選考ができたことが述べられました。続いて、カシオ計算機の創業者であります樫尾茂氏とその子息である4人の兄弟が、財団設立に思い至ったエピソードとして、長男の忠雄氏が若かりし頃、勤め先の工場の社長に人柄と腕を見込まれ、全面支援で仕事の傍ら夜学に通わせてもらったことで社会への恩返しの思いが強かったことや、四兄弟がカシオ計算機の創業間もないころ、先駆的製品であるリレー式計算機の開発に資金面で大変苦労した事などのエピソードが紹介されました。そして、そのような思いで、若手や萌芽的研究への支援を続けている事で、過去の助成金受領者のなかには当該研究がノーベル賞の受賞に繋がった研究者や、各界での多大な貢献がある研究者も多いことに触れ、本年度の助成金受領者の今後への期待が述べられました。
さらに、あらゆる研究分野へ波及しているAIの昨今の発展状況について言及し、「AIが人間の知性を超える日がくるとしても、人の持っている意志や情熱を置き換える事はできない、研究者のみなさんもその意志と情熱をもって新しいことに挑戦していただきたい」と研究者への期待が述べられ、最後に、財団役議員、選考委員ならびに財団の趣旨に賛同され寄付をいただいている協賛各社様の協力に対する謝辞を述べて挨拶を終えました。
続いて今回助成を受けられた51名の研究者の方々が順に紹介された後、選考委員を代表して東北大学名誉教授 枝松 圭一先生が選考総評を述べました。
助成対象者の皆様へのお祝いの言葉を述べられた後、当財団の掲げる「特に若⼿研究者による萌芽的な段階にある先駆的・独創的研究を重点的に選定」という、研究助成趣旨を改めて紹介した後、選考過程について紹介がありました。
今年度の特別テーマ「持続可能な社会の実現に向けた研究」に15件の応募があり、研究内容の先駆性や独創性、SDGsへの貢献を考慮して2件を採択したと報告された。基本テーマについては、テーマ1(助成金額100万円)に167件、テーマ2(助成金額300万円)に75件の応募があり、それぞれ36件と13件を採択したと述べられた。採択率は基本テーマ1で約22%、テーマ2で約17%と、例年にない厳しい選考であったことが説明されました。
そして、若手研究者の支援に重点を置いていることが強調され、全応募課題の35%が20代30代からの提案だったのに対し、採択課題では66%を占めたと報告され、若手研究者の提案の採択率は37%と高く、財団の方針が明確に反映されていることが示されました。
また、女性研究者からの応募比率について言及され、近年緩やかに上昇傾向にあり、今年度は全応募課題の約10%が女性研究者からの提案であったと述べられて、さらに、ジェンダーに関して公平な審査を行っている中、採択課題における女性比率は約14%となり、応募比率を上回ったことが挙げられました。
本財団の助成が自然科学系のみならず人文科学系の研究も対象としていることに触れ、歴史的背景から工学系分野への応募が多い傾向にあることを説明した。しかし、今後も幅広い分野から、女性を含む優秀な若手研究者からの萌芽的、独創的研究提案を期待していると述べられて、最後に、助成金受領者を祝福し、助成金を有効に活用して独創的研究をさらに発展させ、将来素晴らしい成果として結実することを期待し、本助成金の受領が研究者の今後の大きな飛躍のきっかけとなることを願うと述べられました。
引き続き理事長より受領者を代表して、びわこ成蹊スポーツ大学 松本圭将 先生へ研究助成金贈呈状の授与が行われました。
その後、受領者を代表して、特別テーマから豊橋技術科学大学 中内茂樹先生、基本テーマから東京大学の佐々木由比先生の2名より挨拶がありました。
受領者代表挨拶 豊橋技術科学大学 中内茂樹 先生:
「時間変調照明を用いた蛍光指紋計測に基づくマイクロプラスチックの識別・同定システムの開発」(助42-01)
大学を取り巻く環境が厳しさを増す中、研究支援をいただき感謝している。情報科学、特に視覚情報の計測・分析が専門で、現在は海洋プラスチック問題に取り組んでおり、マイクロプラスチックの簡便な検出・同定技術の開発を目指している。この技術により、小型で安価な計測装置の開発が可能となり、海洋環境のモニタリングに貢献できると考えている。国際的な共同研究も進めており、地球規模の問題解決に寄与したいと考えている。海洋プラスチックの99%は行方不明で、食物連鎖を通じて人体への影響が懸念されている。今回の助成を契機として、マイクロプラスチック問題の解決への貢献を皆様にご報告できるように、引き続き精進していきたい。
受領者代表挨拶 東京大学 佐々木由比 先生:
研究テーマ:「ステロイドホルモンの同時判別を可能とする化学センサデバイスの開発」(助42-11)
研究室立ち上げ時にカシオ科学振興財団から最初の助成を受け、感謝している。分子集合体を用いた化学センサの研究を行っている。この技術により、目に見えない化学情報を可視化し、多種多様な物質を同時に検出することが可能になる。分子集合体には大きな可能性があるが、まだ未知の領域も多く、その解明に挑戦している。
実験中に予想外の現象に出会うと、最先端の世界を知る喜びを感じる。博士課程学生の時代に、実験中に初めて出会う現象を目の前に、震えるような経験をしたことがあり、それをきっかけにアカデミアの道を志した。若手研究者の独立支援が重要であり、自身の研究が次世代の研究者を牽引するきっかけとなるよう精進していきたい。
懇親会
贈呈会に引き続き懇親会となり、当財団の理事であるカシオ計算機株式会社 代表取締役会長 樫尾和宏よりの挨拶の後、理事の東北大学名誉教授 水野皓司先生による乾杯のご発声のもと、和やかな雰囲気で参加者全員が交流され、多くの研究者が懇親を深めました。